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展示会感想「東急 暮らしと街の文化-100年の時を拓く」

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1. このページについて

2024年11月30日〜2025年2月2日にかけて、世田谷美術館にて企画されている「東急 暮らしと街の文化-100年の時を拓く」展について、またその関連イベントである、2025年1月11日に開催された「東急の車両設計に携わって」レクチャに参加した感想です。

公式サイト:
「東急 暮らしと街の文化-100年の時を拓く」展
「東急の車両設計に携わって」

2. レクチャ

当日の開始60分前から整理券配布式で定員140名だったんですけど、開始15分前くらいに到着したらもう配布満了していました。ヒェ……
そして「キャンセル出るかもしれないからギリギリにまた来てみて」と言われて、実際にギリギリ入れてもらえました。たぶんあと2名くらい入れてもらってた。つまりキャン待ち含めて満席でした。

2.1. おはなししてくださったかた

荻原俊夫氏(東京急行電鉄車両部OB)
1972年東京急行電鉄入社、1998年まで車両部に配属。

設計をなさっていたとのことなのですけど、定期的に工場(工機事務所)や検車区に配置転換があったそうで、「紙上で設計するだけでなく、車両をつくり、走らせ、メンテナンスし、検査をしてブラッシュアップを繰り返すまでのサイクルをトータルで見る」という姿勢がうかがえたのは興味深かったですね。それにしても三年に一度レベルは多い。

2.2. 感想

窓の数や形へのこだわり、同じ系列の車両で機器を複数のメーカから導入していること、日本で初めての導入技術のアピール、一位まではいけなくても「国よりは早い」と胸をはるようす、等々、実に「私鉄の車両製作メーカらしさ」が感じられるトークでした。
ちなみに、複数の機器メーカから供給してもらうのはメンテナンスのときにはふつうに手間になっていたそう。国による標準化が進む前は、本当に仕様が供給メーカによってバラバラだったらしい……同じ系列なのに車両によって機器が左右どちらについてるかとかサイズとかギア比とか……ステップ高とかまで変わるのか……
それでも意欲的に複数導入し、それを自らの特徴として特筆するというのは、競争してもらうことでコストや技術のエッジを極めてもらおうとしてたんでしょうか。実に私鉄らしい。
あんまり関係ないんですけど、いわゆる私鉄という立場のことを「民鉄」とおっしゃっていたのがちょっと印象に残りました。これって業界用語と古めの言い方なのとどっちなんだろう。
民鉄では「高性能車」と呼ぶんです、という言にもこだわりが感じられました。

2.3. おもしろかったとこ

戦前のモハ1000形についての解説。東急-京急間の直通(車両の融通だったかもしれない……)を見越して、標準軌も履ける想定で長軸台車にしたそうなんですけど、「このころ国では横浜線が標準化試験を行っていた時期で……」と聞いて内心で大盛り上がりしました。凄い! そんな開発競争が!

質疑応答が本番な講演会たまにありますけど、今回がまさにそうでしたね。とても盛り上がりました。もう聴衆の皆様までナチュラルに「推し」っておっしゃる! ほんとに一般的語彙になったのだな(しみじみ)。

東急の車両あまり把握してなくて、現行のを除くと東横のキハ1形くらいしか覚えていなくて。キャンブックスのご本、どういうわけか我が家にあるので、せっかくなので復習したいと思います。
#何故キハ1形を覚えているのかというと、のちに神中鉄道に譲渡されたからです。
ご本はこちら。キャンブックス「東急ステンレスカーのあゆみ」

3. 展示会の感想

おおざっぱに、「鉄道輸送を主軸に」「まちづくり・開発について」「まちに根付いた文化」といった分類でできた展示会でした。特に最後の視点は、さすが美術館開催だな!というアングルで実に面白かったです。とても良かった。

3.1. まず最初に

チケットをもぎり会場への通路にドンと置いてある玉電の線路の遺物!
さすが東急さんの展示だな〜と思ったのですけど、いわゆるタイトルパネルがこの先にある。つまりここは厳密には「展示会の外エリア」である点に、 これは世田谷美術館さんの意思による配置 というのを感じました。

3.2. 第一章 暮らしの時を運ぶ-東急の輸送事業

ヘッドラインは、田園都市会社の解説〜東急(目蒲電鉄)の解説〜発展してから解体されるまでの経緯の解説。
戦前期に吸収された会社についてはリストで、大東急となるあたりの説明は文章で。
解体に関し「電鉄4社と東横百貨店の5社に分割」という表現だったのが印象的です。

こちらは撮影可エリア。かなりマニアックな資料が多い。資料というか設計書というか。
設計書はちゃんと焼いて製本していたけど、社内文書はガリ版もあったんだなあ(新玉川線試運転スケジュール・冊子)。

毎年「蒲田を走る電車まつり」に持ってきていただいてる蒲田駅の模型、こちら(電バス博物館)がお持ちだったんですねえ。

3.3. 第二章 街の時を拓く-東急の街づくり

ヘッドラインは、明治期より人々が集まりはじめ、震災により急速に人口集中がすすんだ東京外縁ですすめられた分譲計画について、という解説。洗足からはじまるんですね。

ここから全エリア撮影禁止となり、「第一章のパネル撮れてありがたかったのに、結局ここ以降の章は引き写さねばならんのか……!」と悲壮な顔でメモっておりました。

『田園都市』というワードへの思い入れがひしひしと伝わってくる良い展示でした。東急の原初たるこのコンセプトを受け継いでつくられたんだなあ、DTさん……

3.4. 第三章 沿線に寄りそう創造-東急沿線に居住した美術家たち

絵あり写真あり立体物あり文章あり! とても良かった! サザエさんの新聞連載のまんがなんかもありました。こういう展示で文章までパネルにして置いてくれるのとても嬉しい。

3.5. 第四章 文化を拓き、育てる-東急の文化的社会貢献

箱物から財団まで、さすが東急グループさんですね……揺り籠から墓場まで感がすごい。

大船にあるでっかい観音さまの建設に関わっていたとは知りませんでした。

4. まとめ

どう思い起こしても展示の中になかった寄稿テキストを図録に載せないでください!!!! 岡田直さんじゃん!!!!
──と、図録のサンプルをめくりながら内心で頭を抱えていました。図録はいいかんじに展示が網羅されていて解説いっぱいでとても良いです、ただ、ハードカバーで2860円……ハードカバー……さすが美術館。

鉄道オタクにも、バスのオタクにも、地図でごはんたべられるオタクにも、美術鑑賞のオタクにも、全方位おすすめできる素敵な展示会でした。時間とおさいふ(入場料)に余裕をもって是非。1400円って高いけど高くないよな〜としみじみしました。

真っ暗になってから退場したんだけど、砧公園まで繋がってる道、足元があまりに暗すぎて、途中に階段あるのになんも見えんで怖かったです……懐中電灯が要る……公園の道は明るかった。


作成日: 2025-01-12
最終更新日: 2025-01-14 火 23:22
作成者: 隠家ミチル(ねこのて)
MAIL: [email protected]
Twitter: @mik_kakureca

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